レーザー場による分子振動の量子制御
   

皆さんは化学反応にどの様なイメージをお持ちですか。試験管・フラスコ等のガラス容器を用いた加熱・攪拌などの作業風景、発熱、色の変化等々でしょうか。この様な我々の目に見える現象としての化学反応もミクロスコピックな(原子・分子サイズのレベルからの)視点から眺めてみると「分子の構成原子の組み替えが時間とともに起こる現象」と捉えることが出来ます。
もし、原子をつまむことができるような非常に小さいピンセットがあったとしたら、分子を構成している原子を直接操作(あちらの結合を切ってこっちにくっつけるといった具合に)することによって強引に新たな化学物質を作ってしまうことができるのではないかという考えが浮かぶ人もいるでしょう。そこで、そのピンセットの代わりの役割をしてくれるのがレーザーパルスです。
最近のレーザーは高出力・短パルス化が進み、中心振動数やパルス幅、パルス形状などの制御も容易になってきています。そこで、上手にデザインされたレーザーパルスを照射することによって、分子内のある特定の結合にメスを入れられる、ひいては目的の原子の組み替え(=化学反応)を起こすことが可能になってきます。そのためには、目的の反応を効率よく促進するために「どの様なレーザー場を照射したらよいかという情報」が不可欠です。本研究室では、原子核の振動・回転運動をレーザーを使って直接的に制御するという「量子制御」の概念に基づき、目的の反応を促進するために最適なレーザー場の設計理論の構築を行っています。

上図は重水素置換された水について、OH結合のみを選択的に切断するためのレーザー場を設計た結果です。図に示すような「制御レーザー場」を照射することにより、OH伸縮方向の振動のみが励起された振動波動関数(波束)が生成され、OH結合が切れやすくなるのです。