複素基底関数法による光イオン化断面積の効率的な計算
   

原子や分子・表面・クラスターに光を十分にエネルギーの高い光を照射すると、束縛されていた電子がエネルギーを受け取り、光電子となって飛び出します。この光電子の量(光イオン化全断面積)や角度分布(光イオン化微分断面積)・エネルギーを精密に測定することで分子の持つ様々な情報が得られます。光イオン化断面積を計算するには電子の連続状態を計算する必要がありますが、連続状態は原子核から遠く離れた領域でも大きな振幅を持つ(図1)ので、束縛状態に比べて計算コストがかかります。この問題を解決するために、私たちのグループでは複素基底関数法の枠組みで、解析接続された振動数依存分極率の変分的安定性を利用して連続状態を効率よく記述する複素STOセットを作成しました。また、それぞれの複素STOをGTOで展開し、応用の一般性を高めた複素STO¬-NGセットも作成しました。作成した複素STOセットを用いて従来複素基底関数法では計算が難しいとされていた光電子角度分布を計算することに成功しました(図2)。また、複素STO-NGセットを用いて光イオン化の二電子励起状態の寄与も計算可能であることを示しました(図3)。

また、この手法を用いると、不安定中間体(共鳴状態)の寿命を直接求めることもできます。