分子振動と光吸収 -なぜ海の色は青いのか? -
   

みなさんは『なぜ花火はきれいに燃えるのか?』とか『なぜ金と銀とは違う色なのか?』など、なにげない疑問を抱いたことがありませんか?また『コップの中の水は透明なのに海の水が青い理由』なども、たいへん興味深いですよね。こうした疑問はみなさんにとって未解決のものがほとんどですが、これらの疑問に答えてくれる学問が『化学』です。すこし前の時代では『試験管やフラスコを使った実験』が、こうした疑問に対する解決策でした。ところがコンピュータの進歩により、いままでは『試験管やフラスコを使った実験』をしなくても、『コンピュータを用いた計算』によりこれらの化学現象に対する答えが得られる時代になりました。まだまだ進歩が激しいこの分野は未解決の問題もたくさんありますが、これからもコンピュータの進歩とともに大きく発展する最先端の研究領域です。
ここでは、私達の研究室での計算結果に基づいて、『コップの中の水は透明なのに海の水が青い理由』を簡単に説明してみます。海や湖の色が青いのは『空の青色が水面に映ったから』とか『光が水面で反射するから』などの説が有名でした。けれどもコンピュータを用いた私達の計算が、海や湖の色が青いのは水が本来もつ性質が原因だと教えてくれました。

水による吸収はとても弱いため、コップの中の水は透明に見えますが、水の深さが数メートル以上ある海や湖の場合には透明ではなくなります。また海や湖の水が青く見える理由は、水による吸収が弱い中でも、青色より赤色の方がおよそ1000倍も強く吸収されるからです。そして吸収された光は水分子を振動させることも分かりました。これらは、みんな計算から分かった事実ですし、その結果が実験による値ととても近いことが理解できます。このように、コンピュータによる化学現象の解明は、これからとても大切な分野になることが予想されます。
【関連研究テーマ】
  1. 高次倍音振動の理論的解析
【関連論文】
  1. K. Takahashi, M. Sugawara, and S. Yabushita, "Effective One-Dimensional Dipole Moment Function for the OH stretching Overtone Spectra of Simple Acids and Alcohols", J. Phys. Chem. A , 109, 4242-4251 (2005).
  2. K. Takahashi, M. Sugawara, and S. Yabushita, "Theoretical Analysis on the Fundamental and Overtone OH Stretching Spectra of Several Simple Acids and Alcohols", J. Phys. Chem. A , 107, 11092-11101 (2003).
  3. K. Takahashi, M. Sugawara, and S. Yabushita, "Theoretical Analysis of the CH Stretching Overtone Vibration of 1,2-Dichloroethylene", J. Phys. Chem. A, 106, 2676-2684 (2002).